出入国在留管理庁は、警察庁・法務省・厚生労働省と「不法就労外国人対策等関係局長連絡会議」を設置し、 不法就労 外国人問題について連携・協力しているところです。
- 2023年末における在留外国人数が過去最高を記録
- 同年の外国人新規入国者数が前年に比べ大幅に増加
日本に在留する外国人は、2023年12月末の時点で340万人を超え、過去最多となりました。出入国在留管理庁によりますと、日本に在留する外国人はおよそ341万1000人で、前の年の同じ時期に比べて33万6000人増え、過去最多となりました。
参考ニュース:在留外国人 去年12月末時点で340万人超 過去最多に | NHK
日本に在留する外国人を取り巻く状況が大きく変化する中、不法就労等外国人は労働市場、治安など様々な分野に影響を及ぼすことが懸念されています。
そこで、不法就労等外国人の原因と、その対策への取り組みについても解説してまいります。
不法就労 外国人問題の現状と対策
不法残留者数の現状
在留資格を有していない不法残留者等の不法滞在者の多くが不法就労に従事しているとみられます。
特に、平成16年から、警察、法務省及び厚生労働省が中心となって不法滞在者の縮減のため各種の取組みを行い、当時約25万人に上ると見られていた不法滞在者を大幅に縮減させ、その結果、不法就労等外国人の縮減を図ることができました。
参考:本邦における不法残留者数について(令和6年1月1日現在) | 出入国在留管理庁
2023年1月1日現在の不法残留者数は7万9,113人と、昨年1月1日現在の不法残留者数に比べ、8,622人増加しています。
以下のような者の存在が深刻な問題となっているとされます。
- 偽変造在留カード等の偽変造文書を行使する者
- 虚偽文書等を行使するなどして、あたかも在留資格のいずれかに該当するかのごとく偽装し不正に在留許可等を受け、不法就労を行ういわゆる偽装滞在者
- 明らかに条約上の難民に該当する事情がないにもかかわらず濫用・誤用的に難民認定申請を行い就労する者
- 技能実習生で実習実施先を失踪しSNS等を利用して他所で就労する者等
国内外のブローカーが介在するなどしてその手口も悪質・巧妙化するなど、不法就労等外国人を巡る問題は依然として看過できない状況とされます。
不法就労 具体的な3つの取り締まり
「『世界一安全な日本』創造戦略2022」に基づき、外国人との共生社会の実現に向けて、不法入国等の事前阻止、不法就労者等の取締りの強化、効果的な在留管理等に向けた情報収集・分析体制の強化などを行うことによって、世界一安全で安心な国を創り上げることとしています。
1 不法就労等の撲滅に向けた取締り
(1)警察及び入管局による不法就労助長事犯(悪質な雇用主、あっせんブローカー等)の取締り強化
(2)警察及び入管局による不法就労事犯(偽造在留カード行使等事案、難民認定申請を悪用した事案等)の取締り強化
(3)警察及び入管局による偽装滞在等事犯(偽装結婚事案、虚偽事由届出等事案、ブローカー等)の取締り強化
(4)警察及び入管局による偽造在留カード製造事案の広範な流通経路等を踏まえた取締り・連携強化
(5)不法就労等外国人が関係する労働関係法令違反事犯(強制労働禁止の罪、中間搾取の罪、無許可職業紹介事業の罪、労働者供給事業禁止の罪等)の取締りに向けた労働局と警察及び入管局との連携強化
(6)警察、入管局及び労働局による人身取引事犯に対する迅速かつ積極的な取締りと外国人被害者の適切な認知・保護
2 取締り強化に向けた緊密な情報交換
(1)雇用環境の変化も踏まえた警察、入管局及び労働局による不法就労事犯・不法就労助長事犯の取締り等のための円滑な情報共有
(2)警察、入管局及び労働局による労働関係法令違反事犯及び人身取引事犯取締りのための円滑な情報共有
(3)警察、入管局及び労働局による上記事犯の犯罪捜査、違反調査等における法令に基づく照会に対する迅速な対応
3 不法就労等防止に向けた広報・啓発活動及び指導の積極的実施
(1)雇用環境の変化も踏まえた警察、入管局及び労働局による不法就労防止のための広報・啓発活動の積極的な推進
(2)警察、入管局及び労働局による不法就労助長行為等の検挙事案等の積極的な広報
(3)警察及び入管局による悪質な外国人材の送出機関に関する情報収集の強化並びに警察、入管局及び労働局による不法就労等の防止のための関係機関を通じた円滑な情報共有・活用
(4)入管局及び労働局による事業主に対する外国人雇用状況届出の履行の徹底と不法就労防止のための指導の促進
(5)入管局の取組(EDカードの電子化による効率的な情報収集・分析、在留カード等読取アプリケーションの配布)に係る警察及び労働局への適切な周知
2021年3月から出入国在留管理庁が保有する在留管理情報と厚生労働省が保有する外国人雇用状況届出情報のオンライン連携が開始されるなど、デジタル化が進む社会の状況に応じて具体的な対策強化が行われています。
就労可能な在留資格
外国人の方は、出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という)で定められている在留資格の範囲内において活動が認められています。現在、在留資格は27種類ありますが、就労の可否に着目すると次の3種類に分けられます。
在留資格に定められた範囲で就労OKな18種類
外交、公用、教授、芸術、宗教、報道、投資・経営、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術、人文知識・国際業務、企業内転勤、興行、技能、技能実習、特定活動(ワーキングホリデー、EPAに基づく外国人看護師・介護福祉士、ポイント制等)になります。
なお、一般の事務所での雇用のケースが多いと考えられるものは次の4種類です。
技術と人文知識・国際業務は、出入国在留管理庁の区分では一つですが、厚生労働省では分けておりますのでご注意ください。
- 技術………………… コンピューター技師、自動車設計技師等
- 人文知識・国際業務…… 通訳、語学の指導、為替ディーラー、デザイナー等
- 企業内転勤……………… 企業が海外の本店又は支店から期間を定めて受け入れる社員(活動は、「技術」、「人文知識・国際業務」に掲げるものに限る。)
- 技能………………… 中華料理・フランス料理のコック等
原則として就労が認められない在留資格は5種類
- 文化活動
- 短期滞在
- 留学
- 研修
- 家族滞在
「留学」及び「家族滞在」の在留資格をもって在留する外国人の方がアルバイト等の就労活動を行う場合には、地方入国管理局で資格外活動の許可を受けることが必要です。具体的な許可の範囲については、「資格外活動許可書」により確認することができます。
就労活動に制限がない在留資格は4種類
身分系在留資格とも言われます。日本人と変わらず仕事内容や労働時間に制約はありません。
- 永住者
- 日本人の配偶者等
- 永住者の配偶者等
- 定住者
これらの在留資格をもって在留する外国人の方は就労活動に制限はありません。「短期滞在」の在留資格により在留している日系人の方は、地方入国管理局において在留資格の変更の許可を受けないと就労できません。
「 難民ビザ 」とは仮滞在の状況
難民ビザは、上記のような正式な在留資格ではありません。一般的には出入国在留管理庁に難民認定申請を行い、その結果を待っている状況を指します。つまり、定住者を目的に申請中ですが、仮滞在の状態になります。
本来は難民申請の間は、収容施設に入って待機するところを、仮滞在を受ければ収容所を免除されます。
難民認定申請とは、「難民である外国人は、難民認定申請を行い、法務大臣から難民であるとの認定を受けることができ、また、難民条約に規定する難民としての保護を受けることができる」と出入国在留管理庁のHP上に記載があります。人種や宗教、国籍、政治などの問題で迫害を受ける可能性があるため、自国の国外にいる方たちが対象となり、出入国在留管理庁がその審査を行います。
難民ビザ と特定活動ビザ
「難民ビザ」という言葉は難民認定申請の結果を待っている方を対象とする言葉ですが、ビザではありません。申請中の方のうちで一部の方が、「特定活動」というビザ区分を持っていれば、様々な特定活動のうちでも難民の方がもっている特定活動ビザという意味で、通称として難民ビザと言われます。
特定活動は短期滞在、技能実習に次ぐ第3位8,815件、11.1%のビザです。
在留資格ごとの不法滞在者
特定活動は、該当例としては、外交官等の家事使用人、ワーキング・ホリデー等が挙げられており、通常の就労には該当しない「その他」であったり、別の在留資格への移行期間であったりします。
2018年改正で就労に制限
2018年1月15日から開始した新たな運用において、就労制限の対象となる難民認定申請者は、申請案件の振分けの結果、A案件、B案件のいずれにも該当しないとし、,D案件に振り分けられた初回申請者のうち、次の2つの類型のいずれかに該当する人(D1)です。
D1は本来の在留活動を行わなくなった後に難民認定申請した人、又は出国準備期間中に難民認定申請した人が該当し、就労が制限される「特定活動(3月、就労不可)になります。
申請者はA、B、C、Dのグループ分け
難民認定申請を受け付けると、多くの場合、最初に2ヵ月の特定活動が許可されます。この期間中、難民申請書の確認が行われ、申請者はA、B、C、Dのグループに振り分けられます。
振分け期間である2月以下の在留期間(振分け期間が必要な場合)では就労不可です。
〔振分けの分類〕
A案件:難民条約上の難民である可能性が高いと思われる案件、または、本国情勢等により人道上の配慮を要する可能性が高いと思われる案件
⇒判明後、速やかに「特定活動(6月、就労可)」を付与
B案件:難民条約上の迫害事由に明らかに該当しない事情を主張している案件※
⇒在留制限
C案件:再申請である場合に、正当な理由なく前回と同様の 主張を繰り返している案件※
⇒在留制限
※ 人道配慮の必要性を検討する必要がある場合はD案件とする。
D案件:上記A、B、C以外の案件
D1 本来の在留活動を行わなくなった後に難民認定申請した人、または出国準備期間中に難民認定申請した人
⇒就労制限:「特定活動(3月、就労不可)」
D2 D1以外の人
⇒申請等から6月以内:「特定活動(3月、就労不可)」を2回許可
⇒申請等から6月経過後:「特定活動(6月、就労可)」
振り分けられたグループによって、今後受け取ることができる在留資格が決定されます。多くの場合、Dグループに振り分けられ、難民認定申請からおよそ8ヶ月後に、6ヶ月の「特定活動」の在留カードが発行され、就労が可能となります。
Aグループに振り分けられると、すぐに6ヵ月の「特定活動」が与えられますが、法改正のあった2018年以降では非常に確率は低いと言われるので、難民申請自体の件数まで大きく落ち込みました。
2017年(平成29年)の19,629人から平成30年、令和元年と半減しました。それ以降はコロナ問題などの影響なのか低調な申請数でしたが、令和5年には13,823人と急増しています。
参考:難民認定申請者数の推移、出入国在留管理庁
令和5年における難民認定者数
難民認定申請者数は13,823人で、前年に比べ10,051人(約266%)増加。また、難民の認定をしない処分に対する審査請求数は5,247人で、前年に比べ786人(約18%)増加。
難民認定等手続きの結果、我が国での在留を認めた外国人は1,310人。その内訳は、難民と認定した外国人が303人、難民とは認定しなかったものの補完的保護対象者と認定した外国人が2人、難民及び補完的保護対象者のいずれにも認定しなかったものの人道的な配慮を理由に在留を認めた外国人が1,005人となっています。
難民認定申請中における仮滞在
不法滞在者等の在留資格未取得外国人から難民認定申請があったときは、その者の法的地位の安定を図るため、当該外国人が本邦に上陸した日(本邦にある間に難民となる事由が生じた者にあっては、その事実を知った日)から6か月以内に難民認定申請を行ったものであるとき又は難民条約上の迫害を受けるおそれのあった領域から直接本邦に入ったものであるときなどの一定の要件を満たす場合には、仮に本邦に滞在することを許可し、その間は退去強制手続が停止されます。
なお、仮滞在許可の判断は、難民認定申請者から提出のあった難民・補完的保護対象者認定申請書等の書類により行いますので、別途、仮滞在許可のための申請は必要ありません。
(1)仮滞在許可による滞在
仮滞在許可を受けると一時的に退去強制手続が停止され、仮滞在期間の経過等当該許可が終了するまでの間は、適法に本邦に滞在することができます。
(2)仮滞在許可書
法務大臣が仮滞在の許可をした外国人には、仮滞在許可書が交付されます。
許可を受けている間は、この許可書を常に携帯する必要があります。
(3)仮滞在期間及び同期間の延長
仮滞在期間は、原則として6月です。
仮滞在期間の更新申請は、許可期限の10日前から受け付けており、申請書は、各地方出入国在留管理局、支局及び出張所の窓口に備え付けてあります。
(4)仮滞在許可の条件
仮滞在許可を受けた外国人は、住居や行動範囲が制限されるほか、本邦における活動についても、就労は禁止され、また、難民調査官から出頭の要請があった場合には、指定された日時、場所に出頭して、難民認定手続へ協力する義務が課されるなど、種々の条件が付されます。
(5)仮滞在の許可の取消し
仮滞在の許可を受けた外国人がその付された条件に違反した場合、不正に難民の認定を受ける目的で偽変造された資料を提出した場合、虚偽の陳述をした場合等には仮滞在の許可が取り消されることがあります。
警視庁も外国人の 不法就労 対策として適正雇用を推進
令和6年1月1日現在、日本国内に約7万9,000人の不法残留者がおり、その多くが不法就労をしていると思われます。取り締まりにもかかわらず不法残留が減らない理由は雇用者からのニーズがあるのが原因で、警察も罰則を設けて対応し、出入国在留管理庁は法務省、厚生労働省とも連携して取り締まりを行っています。
雇用者への罰則
働くことが認められていない外国人を雇用した事業主や、不法就労をあっせんした者は不法就労助長不法就労助長罪の処罰対象になります。罰則は、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又はその併科になります。
外国人の雇用時に、当該外国人が不法就労者であることを知らなくても、在留カードの確認をしていない等の過失がある場合は処罰の対象となります。又、その行為者を罰するだけではなく、その法人、雇用主等に対しても罰金刑が科せられます。
全ての事業主は、外国人労働者(在留資格「外交」及び「公用」並びに「特別永住者」を除く。)の雇用又は離職の際に、その外国人の氏名、在留資格、在留期間等について厚生労働大臣(ハローワーク)への届出が義務付けられています。罰則は30万円以下の罰金です。
不法就労 助長しないように雇用者の注意点
不法就労になるのは、週28時間などの制約がある場合には、最低でもその勤務先でどの日から切っても週28時間以内の就労としなければいけません。
難民申請中でも、特定活動ビザ(6月、就労可)が必要です。
- 不法滞在者や被退去強制者が働く場合
- オーバーステイや、密入国した者が働くこと
- 退去強制されることが決まっている人が働くこと
- 出入国在留管理庁から働く許可を受けずに働く場合
- 留学生、難民認定申請中の者が許可を得ないで働くこと
- 観光等の短期滞在目的で入国した者が働くこと
- 働く事が認められている外国人がその在留資格で認められた範囲を超えて働く場合
- 調理人や、語学学校教師として認められた人が工場で単純労働をすること
- 留学生が許可された労働時間を超えて働くこと
参考:外国人の適正雇用について、警視庁
適切なビザ申請で 不法就労 とはお別れを
不法就労の外国人の数が2023年末で7.9万人に達するなかで、合法の在留外国人も340万人と過去最高に達し、日本の全人口の3%弱を占めます。外国人全体のパイが膨らみ、これまで通りの取り締まりでは足りないとの認識で、行政も連携しております。
不法就労の中でも難民に関係する問題を取り上げてみました。ビザ絡みでは難民の占める割合は小さいので比率では焦点が当たりにくいですが、仕組みが通常のビザとは異なるので詳しく紹介してみました。
難民ビザ、などと言われて難民申請が合法な就労の隠れ蓑になっていたのが、2018年の改正で申請期間中は就労ができる要件が厳しくなり、特定活動の不法な就労に混入しているかもしれません。厚生労働省のサイトを用いて、就労可能な3つのビザの分類と、難民ビザは通称であって本来のビザ区分ではないとも解説しました。
6月10日から難民申請は、3回目の申請以降で不許可になると強制国外退去の可能性が高まりました。
参考記事:入管法改正 : 難民認定申請 を3回以上で強制送還が可能に!
難民申請も、就労ビザ申請も作成する書類の内容はほぼ同じです。ご本人の書類と、難民ならば母国からの難民に至る関係書類、就労ビザならば職歴や学歴に関する書類をまとめて、入管申請の専門家である行政書士に渡せば、内容を確認して不足や補足のアドバスがもらえます。
参考記事:日本での 難民認定申請 ビザ自動見積もり行政書士が解説
VISAdeAI にも有益な記事が多数ありますので参考にしつつ、難民の証明が準備段階で困難が予想される場合には、費用の見積もりも簡単ですから、初めから行政書士にご依頼ください。
Oka, Takashi – Immigration Lawyer